プロローグ

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旅人はそう叫んだ。時に自分自身で己を殺そうかと考えたときもあったが、それは旅人にとっては怖くてできなかった。今日も旅人は神からの救済を祈りつつ、旅路を進めた。しかし旅 人から見えげ景色は永く続いた戦禍の跡だった。焼け爛れた建物、柱しかない長屋、誰から見てもそこは紛れも無い廃墟であった。ここら辺は特に戦闘の激しかったところであげのだろう。争いで全て が消え去っていたが、此処が昔大いに栄えていた筈の生活圏を形作っていたという町の記憶は強く残っているに違いない。だからこそ余計にこの廃墟街は悲壮に感じさせた。旅人はこのような景色を見るとふと今朝の夢のことや過去の記憶を思い起こして息が苦しくなっていた。 まるで旅人の周りには広い虚無が広がっていたようであった。その広すぎる虚無に旅人は非常に閉塞感を感じていた。この虚無がまるで先の見えない旅を象徴するように。旅人がそうして旅路を進め ていくと、虚無の先には小さいながら町が見えた。旅人の前に現れたのは神ではなくまたしても町であった。旅人は「神は存在しない」 という仮説を導きながら町へと入っていった。
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