愛の一升瓶

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愛の一升瓶

 ようやく念願のマイホームを手に入れたはいいが、引っ越しの荷物が片付くには1週間はかかりそうで、このゴールデンウィークは荷物整理でつぶれそうである。  「あ~割れてる~」  今年成人式を迎えた娘の穂乃果が箱の中から割れた瓶を持ち上げる。 瓶は蓋の部分から円錐形に膨らんだ部分だけ残り、後は粉々割れて新聞紙に包まれていた。  私と妻の優子が近寄り、ダンボールの中を覗くと  割れた瓶の欠片の上で、黄金色に輝く5円玉が大量に盛られている。  まるで埋蔵金でも見つけたかのように二人はお互いを見つめ合い顔がほころぶ。  二人は片付けるのも忘れて黄金の山のように輝く5円玉を見つめて昔を思い出していた。  当時25歳だった僕は山のような仕事を抱えて心の空白を埋めていた。  僕はマンションに帰るとネクタイを解き、冷蔵庫から良く冷えた缶ビールを取り出す。  ノートパソコンの前に座り、ビールを口に含む。  ほろ苦い辛さが口から侵入して来て、僕の体を内側から熱くさせる。  缶ビールをテーブルに置き、椅子に腰掛け目の前の一升瓶を見る。  半分まで5円玉硬貨が詰まった一升瓶。  僕の視線が黒電話と一升瓶の間を彷徨う。     
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