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影の正体の一人である、ぼっちゃんと呼ばれた男の子が訊ねました。彼は六年生になりましたが、みんなよりも頭一個分背が低く、声も風貌も一見女の子のようでした。キッドはぼっちゃんと比べると、背が高く、空手を習っているせいか筋肉質ながっちりとした体格の男の子です。二人が並ぶと親子のような身長差がありますが、彼らはクラスメイトで親友でした。
「おれはいつでも腹ペコなんだ。ちょっと夜食を食べさせてくれよ」
キッドは背負っていたリュックサックの中から、菓子パンを取り出し、封を切ると口いっぱいに頬張りました。
「しっ、二人とも静かにしろや。マルヤの犬っころに気付かれんだろ? あの犬、バカ犬だから、一度鳴き出したら夜じゅうずっと鳴いてるんだから。マルヤの婆ちゃんに気付かれたら、先生んちに連絡されちまうかもしれねえだろ?」
懐中電灯の光を二人に当てながら、口元に人差し指を立てている男の子は、テンサイです。テンサイはそのあだ名の通り、小学校一番の秀才です。いつも難しい本を読んでいて、全国テストで上位に入ったこともあり、村の大人たちの間では「神童」と呼ばれていました。
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