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ちょっと皮肉屋なのが玉に瑕ですが、本人はテンサイというあだ名を気に入っていました。
マルヤというのは小学校の真向かいにある駄菓子屋さんで、腰の曲がったお婆さんが一人で切り盛りしていました。お婆さんはマルという柴犬を飼っているのですが、その犬は怖がりで、ちょっとした物音に反応して、ずっと鳴き続けるのです。星影村は総人口が八百人程の小さな村でしたから、テンサイは、時折聞こえるマルの遠吠えに、頭を悩ませていたのでした。
「眩しいよ、テンサイ」
ぼっちゃんは目をしぱしぱさせながら、右手でライトの光を遮りました。テンサイは踵を返すと、今度は前にいる二人の男の子の背中を照らしました。彼らはオサムとブンゴウと言います。みんな星影小学校の六年生で、五人はいつも一緒に行動を共にする仲良し組でした。
「錠が掛かってら。数字合わせて鍵が開くやつだ。誰か番号知ってる奴、いっか?」
鍵を手に取り、オサムが溜息を吐きました。その隣に立つブンゴウが門を揺らしてみましたが、ぴくりとも動きません。校舎を背にし、裏山へと続く境界線は鉄格子で囲まれていました。
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