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月は輝く──
まるで光りを次の新月に受け継がせるように強く煌めく。
最期(終り)は何事も美しく感じる──
窓から見える高い塔。その後ろには光り輝く満月がそびえている。
モーリスはそれを見つめ諦めのため息を吐いていた。
「やはり難しい賭けでございましたか……」
ぽつり呟き見上げていた窓に背を向ける。
コツコツとゆっくり踏み進める足音──
モーリスはそれを鳴らしながら屋根裏部屋の扉を開いた。
柩から出したルナを抱き締めて、そこに背を預けて床に座り込んだまま、グレイは遠い目をしていた。
「旦那様…」
モーリスは小さく呼び掛ける。
聞こえたのか聞こえていないのか…ただ、今の主人のことを思うとそう口喧しく呼び掛けることはできない。
もう一度小さく口を開きかけたモーリスを、グレイはゆっくり顔だけを向けて振り向いた。
モーリスはまるで放心状態の表情のグレイに、言い掛けた言葉を伝える。
「日が変われば三日が過ぎてしまいます……どうかルナ様を──」
「……ルナを…なんだ」
「───…」
とても弱々しい瞳を向けられてモーリスは驚いた。
まるでルナと共に朽ち果てそうな程に衰弱した表情。
それ程までに辛いのなら何故あれが手に入らないのか──
魔物の中の魔物であることがそれを許しはしないのだろうか。
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