21章 禁断の書

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モーリスは変わり果てたグレイに悲しい目を向けた。 「ルナ様を柩に戻して下さいまし……」 「………」 「もうそろそろ還して差し上げましょう……」 モーリスの言葉にグレイの空の瞳がゆっくりと見開いていく── 次第に強い反抗を瞳に見せたグレイにモーリスは口を開いた。 「ルナ様を見てください……このままではあまりにも不憫でございましょう…」 グレイは胸に抱き締めていたルナを見る。 そして大きく目を見開いた。 「ルナ…っ」 白かった肌。 からかえば柔らかい頬を一層桃色に染めて怒っていたルナとは思えぬ程、まだらな土色に変色した死人顔のルナにグレイは思わず口元を押さえ込む。 「それ以上憐れな姿になる前に、旦那様──…どうかルナ様にお慈悲をくださいまし…」 「───……」 「ルナ様とて、このような姿を旦那様にはお見せしたくはない筈でしょう……」 「……っ…」 「早く柩へ……」 グレイは諭されながらもルナを見つめ顔を歪める。 ルナの躰がゆっくりと朽ちていく── それこそ今に肌も枯れて痩せ細り、皮は骨にこびり付いて内臓は虫けらの魔物に食い荒らされる。 それはあまりにも惨いことだ。 鏡を覗き、年相応──…いや、それ以上に背伸びをしたがった。 グレイは人の世界でほんの束の間を一緒に過ごしたルナの記憶を浮かべて悲し気に目を細める。
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