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「……っ…」
グレイは密かに眉をしかめた。
しまった──…
時間を取りすぎた。
グレイは小さな焦りを浮かべ、ルナを見た。
「……!?…」
間に合わない。
抱き締めていたルナの足がサラサラと砂のように崩れ消えていく。
人間界に降り立つまで、その土にルナを還してやれるまで、ルナの肉体が持たない──
先を進むにつれて、人間界の朝日が近付き、魔界の闇が遠退いていく──
月の力が弱まっていく。
グレイは崩れていくルナの躰を必死に掻き抱いた。
「早い…っ…まだ逝くなっ」
グレイの口からそんな言葉が叫ばれた。
急下降してグレイはまだ異空間の歪んだ地に足をつけ着地する。
捻れによって強い風が吹き荒れる。その間もルナの躰は止まることなく朽ちていく。
「ルナッ!…」
闇の主らしかぬ焦りと大声をグレイは露にした。
上空で砂になり翔んでいったルナの足はもう膝から下がない。
下に下ろして上半身だけを抱き上げると、膨らんでいた花嫁衣装のドレスのスカートは次第にペタリとなって抜け殻になっていく……
グレイはドレスの裾をめくって目を見開いた。
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