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「足がっ…」
ルナの太ももが砂になって崩れていく。
「──っ…足が消えるっ…」
有り得ないほど頬が引きつり全身が震える。
それはグレイが今まで感じたことのない恐怖に怯えていた証拠だった。
「ルナっ…っ…」
急に吹いた風がルナの砂の欠片を浚っていく──
グレイは散っていくそれを取り乱したように必死でかき寄せて、長いマントと大きな翼で庇っていた。
「ルナ……逝くな…頼むから逝くなっ…」
ルナの下半身が萎れるようにドレスの膨らみがなくなっていく──
グレイは震える手ですがるようにルナの小さな手を握り口を寄せる。
覚悟を決めた筈なのに、目の前にするルナの死がこんなにも辛い。
砂へと朽ちていく細い躰が見る間に灰となり消え去っていく──
グレイは震える唇を何度も何度もルナにはめてやった指輪に押し当てて擦り付ける。
「逝くな…っ…」
苦しい──
「お前は俺のっ…」
花嫁になる筈だ──
「……っ…ルナっ…頼むから逝くなっ」
グレイは何度も叫んだ。
だがその声はただ異空に響き誰の耳にも届かなかった。
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