21章 禁断の書

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塔の最上層へたどり着いたモーリスはその扉を開けて中に入った。 下に見える邸は元々人であったモーリスの物だ。だがここは違う。 この塔は闇の主、グレイが長きに渡り棲んでいた魔城への入り口だ。 端から望めば一本の柱の建物のようなその佇まい。だが、ひと度足を踏み入れればそこはとても巨大な要塞の、魔城の門と繋がっていた。 城の地下にある重い石の扉の向こうには、もう我が主さえそう足を運ぶことのない部屋があった。 そこには無数に置かれた石の柩。そして壁際にある棚には古めかしい書物が並んでいる。 柩の蓋には名前らしき文字が刻まれていた。 モーリスはルナが邸に来てからというもの、花嫁に迎える準備の為に何度か足を運んだここで幾つもの書物を目にしていた。 人である物を魔物の花嫁にする儀式の書── そして… 「おお、これでしたな」 モーリスは呟くと昔記憶にあったそれを探しだし、棚から抜き取る。 そして誰の物ともわからぬ柩に腰掛けて足を組んでいた。
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