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モーリスは黒い魔獣の分厚い革で作られた書物の表紙を捲る。
──†──†──
召喚の儀式
復活の儀式
蘇生の儀式
──†──†──
下僕となる使い魔を召喚する儀式。
そして復活の儀式は亡骸のない魂を入れ物となる型に還す儀式だ。
モーリスは蘇生の儀式の頁を開きそこに目を落とした。
その頁には最も禁断の儀式故に多様できないような術が書かれている。
儀式に必要な物はたった一つ。
だがそのたった一つが最も手に入れることが困難だった。
偉大な魔物の雫石(だせき)──
「雫石──…これはまた…」
モーリスは初めて詳しく目を通したその内容に暫し口を結んだ。
偉大な魔物。それなら我が主で十分だ──
だがその雫石、これだけは簡単に入手できる物ではない。
力もあり、永く生きてきた魔物であるからこそ偉大。
そして魔物の中の魔物であるからこそ中々手には入らぬ“雫石”の価値がある──
モーリスは顎に指を添えて難しい表情で眉間を寄せた。
雫石が手に入るか…
賭けるしかない──
今の旦那様からなら雫石を手に入れられる可能性がある。
モーリスは禁断の書を元に戻すと直ぐに揺れ動く塔を出てグレイの部屋に向かった。
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