21章 禁断の書

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「ルナ様の為でこざいますっ…いつまでもそうしていては魔に巣食われるだけっ…旦那様が昔私に言ったようにっ…人でも何でもない死霊となり死体を貪る化け物に成り果ててしまいますよっ」 怒鳴りながら口にしたモーリスの言葉にグレイは目を見開いた。 グレイは抱いていたルナを見つめるとその顔を微かに歪める。 人でも何物でもなくなる── ただ死肉を喰いあさり、腐敗臭を撒き散らし夜毎人間の墓を荒らす。 グール(腐った死霊)… 「……っ…」 グレイは瞼を閉じた幼いルナの無垢な寝顔に目を向けた。 「三日……別れを惜しむなら三日あれば足りますでしょう──…月が満ちてることが幸いしました。旦那様の力が強まれば、ルナ様の肉体が腐敗するのに少しばかり歯止めが効きます。旦那様、結界を張り直してくださいませ──。邸がすっかりボロボロでございます。良からぬ魔を寄せ付けぬよう、お願い致します──…」 「………」 「よろしゅうございますか?」 「わかった…直ぐにやる…っ」 モーリスはグレイの低い声に頷いた。
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