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「ん……?」
そっと頬を撫でられる感触に、意識が浮上する。
サラッ…と髪を鋤かれる優しい感触も。
「…………」
ふ、と目が覚めた。
あ、れ……?朝?
「おはよ、亜朗」
ん~……?
まだ頭がボーっとしてる……。
目の前に……………千尋?
千尋が優しい顔で見下ろして……。
……ぅん?
…………え?
目の前?
俺、たった今起きたんだよね?
天井じゃなく、何で千尋の顔?
「ぅわぁぁぁぁぁ!!」
ゴッッ!!━━━━━━━━━━
「「いっ……!」」
痛い痛い痛い!
全力で千尋に頭突きを喰らわせてしまった。
「~~っ、ご、ごめん」
「いや、こっちこそ……」
うぅ、痛みで涙出る……。
少し痛みが和らいで、ギュッと瞑っていた目を開けると、足元に自分の枕を発見。
「あれ?枕……」
「あぁ、邪魔だったから退かした♪」
あ、俺の寝相が悪い訳じゃなかったんだ。
………って?
「退かした……」
クルッと振り返って本来の枕の定位置を確認。
……そこには千尋の太腿。
「千尋?」
「何?」
「また膝枕?」
「うん。正確には腿だけど」
……うん、そうだね。
腿枕とでも言えばいいのかい?
千尋はたまに、今日みたいに膝ま……腿枕を俺が寝てる隙にしてる事がある。
「顔、洗って来たら?」
「ん。今何時?」
「6時半」
ベッドから降りて洗面所に向かう。
…………千尋の腿枕で目が覚めた時の大半は……。
「……やっぱり……」
鏡に映る自分の顔を見て、涙の跡を見付ける。
さっきの頭突きで滲んだ涙じゃなく、普通に流れた涙の跡。
きっとまた、何か夢を見ていたに違いない。
いつ、その事に気付いたのか忘れてしまったけど、千尋が腿枕をしてくれた時は、目が覚めてから震えてる事が無い。
覚えてもいない夢から醒めて、苦しくて、怖くて……1人で震えて泣く事が、無い。
千尋は、うなされてたよ、とか、泣いてたけど大丈夫?、とか一切言わないから。
だから俺も涙の跡に気付いてない振りをしてるけど。
……本当に、ありがとう……。
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