*** 好きな子 1 ***

3/3
3697人が本棚に入れています
本棚に追加
/2994ページ
「「「「「バカァァァッッ!!」」」」」 ぅわ、何っ!? 物凄い勢いで、5人が叫びながら反対側からサッカーコートを横切って走って来る。 「腹チラした…」 「やべ…見ちゃった…」 「色、白っ…」 「腹筋割れてた…」 「あんな細いのに…」 「もぉ、何であんなカッコいいの…」 5人の剣幕に驚いて、周囲の生徒のザワつく言葉がちゃんと聞き取れない。 ほんの数秒で俺の所に辿り着いた5人に、一瞬にして囲まれた。 「亜朗っ!何やってんのっ!」 え…? 「腹チラとかいらないからっ!」 …えぇ…腹チラ…? 「周りに見せるなっ!」 …わざとじゃないし…。 「俺らしか見ちゃ駄目なんだからっ!」 ……ぃや、それもどうかと…。 「合図送ったのにっ!」 ………………分かんないって……。 凄い剣幕の5人に、俺は戸惑いながら言葉を発する。 「わ、わざとじゃないし、誰も俺の腹チラなんて興味ないって……」 「「「「「………………」」」」」 半眼で俺を見てくる5人。 「あのな、良く聞けよ」 「亜朗は俺らのでしょ?」 「嫌なんだよ」 「亜朗の肌が誰かに見られんの」 「誰にも見せたくない」 真剣な瞳でそう言われて、途端に顔が赤くなった。 「っ…でも……別に……」 まだ言うか、という表情をして5人は溜め息を吐く。 「そんな事言ってるとさぁ……なぁ?」 「うん、俺らにだって考えあるよ?」 「腹とか背中、出せなくしてあげようか?」 「キスマーク付けてもいい?」 「絶対人に見せられない位、沢山♪」 そう言って、ニヤリと意地悪そうに笑った。 「な……っ!」 ……なななな、何を……っ! カアァァァ、と耳まで熱くなる。 最近、5人は何故か前にも増して、俺に対して露骨に好きだという意味の言葉を言ってくる。 前は言った事が無い様な、今みたいな…キ、キ……キス、マーク……とか……言うし。 「…亜朗、いいの?」 想に真っ直ぐ目を見て聞かれて、俺は咄嗟にTシャツの裾をジャージの中に入れ込む。 「こ、これでいいでしょっ……!?」 「ぶっは!」 想が吹き出すと、他の4人も笑い出す。 「どうしてそんな、めんこいの?」 あははっ!と笑いながら想が俺を見る。 ……どうして、って聞かれても……。 …返答に困る……。 …………てか、この格好も大概恥ずかしいんですけど。
/2994ページ

最初のコメントを投稿しよう!