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もぅ、いーかぁーい…
まぁだだよー…
もぅ、いーかぁーい…
………
「もぉ、だーれも見つかんないっ!」
「もー…コーサンっ!…もーやめるっ!」
「……」
「……なんで…だれも出てきてくんないの?」
「………みんな…いないの…?」
「ねー!……ねぇってば!!」
「………」
「…そぅ?…ゆぅ?…よぅ?……ちーちゃん?」
「……っ…!」
「だれかいないのっっ!?」
「置いてかないでよっっ!」
「ひとりにしないでっっ!」
「だれかっっ……!!」
━━━━━━━
「誰かっっ…!」
……………。
「…っ……」
…どうやらまた、自分の叫び声で目が覚めたらしい。
「…ッ…はぁ……」
ベッドに横になったまま、溜め息と共に両手で顔を覆う。
まただ…。
また、コレ。
手が震えている。
いや、手だけじゃない。
全身が震えているし、変な汗もかいている。
「また…覚えてなぃ…」
何か夢を視たのは、分かる。
うん、夢を視たはず。
多分きっと、恐い夢だろう。
そうじゃなきゃ、この震えに理由がつかない。
情けない位に震える両手に、ジワリと水分が滲んで来るのが分かる。
…泣いてる……俺。
目が覚めた瞬間にはすっかり忘れてしまっている、夢。
もう何度も。
何度もこういう目覚めを経験した。
「…ビョーキみたい…」
自嘲気味に呟いて、よっ、とベッドから体を起こす。
覚えていないものは仕方ない。
いつまでも震えてる訳にもいかない。
ベッドサイドの目覚まし時計を確認すると、まだ5時半をちょっと過ぎた位。
「……ちょっと走ろうかな…」
ベッドから降り、んーーっと伸びをして体を無理矢理に起こしてあげる。
よし、大丈夫。
もう震えは止まった。
クローゼットからランニングウェアを取り出し、ちゃっちゃと着替を済まして自室を出た。
家の玄関を出ると、うっすら朝靄がかかっている。
変な汗かいて起きた体には、ヒンヤリしていて気持ちがいい。
大丈夫。
俺は傷付かない。傷付いちゃいけない。
…よし、行くか!
一つ大きく深呼吸をして走り出す。
俺は傷付いちゃ駄目なんだ。
絶対に。
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