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今日は外部生徒会主催の新入生歓迎式典。
服装に関しては割りと自由が許されているこの皐月学園も、式典の際は制服を正しく着ないといけない。
ネイビーのブレザー。
ブラックウォッチチェックのパンツ。
ライトグレーのカッターシャツ。
学年によって色が決められている校章の刺繍が入ったネクタイ。
1年生はサックスブルー。
ちなみに内部生は刺繍が白で、外部生は刺繍が黒。
これで見分けが付く。
……わざわざ見分けられる様になんてしなきゃいいのに、両生徒会発足時にそうなったらしい。
「ネクタイって、ホント堅苦しい……」
湊斗が今にもほどきたそうに、結び目に指をかける。
分かるー。分かるよー。
「俺も苦手、肩凝るよねー」
「世の中のサラリーマンの方々は慣れなのかなぁ」
こんな会話をしながら、寮から校舎へと向かう。
外部生は各クラス30名×5クラスの150名。
内部生は30名×6クラスの180名。
俺の早起きで俺ら6人は早めに寮を出ていた為、合計330名を受け入れる1年生用の下駄箱付近はまだ静か。
ブブッ━━━━━━━━
ん?LINE?
靴箱から上履きを出しながら、パンツのお尻のポケットからスマホを引っ張り出す。
朝っぱらから誰だろ?
千尋も三つ子もここにいるし……。
『亜朗くん、おはよう!千尋に内緒で理事長室に来れないかなー?』
予想外の人物からだった。
『多分それは無理です。撒けません……』
『だよねー、じゃあ一緒に来て貰える?』
『5分後に伺います。』
『職員室の更に奥だから。宜しく!』
スマホをポケットにしまうと、視線で千尋を探す。
「あれ?千尋は?」
「あっち」
俺の隣にくっついていた想が、ちょっと離れた場所で知らない生徒と話している千尋を指差す。
お……?これは……撒けるっ!?
なんて事を考えた瞬間、想にグイッと肩を抱かれる。
「どこ行くつもり?」
……………鋭い……。
例え千尋を撒けたとしても、三つ子もいるから俺が1人になる事は出来ない。
というか、そんな事出来やしない、って方が正しいんだけど……。
「大丈夫♪1人で勝手に何処かに行くなんて事しないから。安心して?」
不安そうな想の頭を撫でてあげれば、安心した表情を見せてくれる。
「ん♪1人でいなくならないでね?」
ニッコリ笑う想。
………………分かってる。
…………二度とそんな事、しないからね…………。
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