*** 好きな子 2 ***

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「はい♪これに着替えて?」 ニコニコ笑顔の葉に手渡されたのは、葉のTシャツだった。 「え……何で……?」 「僕の亜朗着たらおっきいでしょ?丈も長いから、ジャンプしても腹チラしないよ♪」 …………そういう事か………。 「いいよ…、ジャージ着とくから」 そう言って葉にTシャツを返そうとすると、またグイ、と手を引かれて更衣室の隅に連れて行かれた。 トン…━━━ 肩を押されて、背中が壁に付く。 「はい、どうぞ♪着替えて?」 俺の左右に両手を付いて、逃げられないようにされた。 「……え、何なに?」 「……壁ドンされてる!?」 数人いた生徒が興味津々に、こっちの様子を窺う。 「………………見てんじゃねぇぞ…………」 低い声でチラッとそっちを見て葉が言う。 「……っ!怖っ!」 「い、行こ……」 バタバタと更衣室を出て行ってしまった。 「よ、葉……っ!」 あんな態度取らなくても、と思い葉の名前を呼ぶ。 「今から亜朗着替えるのに、見せたくないでしょ?」 ニコニコと、俺には笑顔の葉。 ……もう、ホント可愛い。 「亜朗、熱中症になるかも、って考え足りなくてごめんね?」 「ダメだね、僕。あろ……好きな子の事なのに、そこに配慮できないなんて……」 コツ、とオデコがぶつかる。 「…………ょ…ぅ…」 …………い、い、今……『好きな子』……って……。 ……お、俺……なんだよね……? な、何か…………照れる……。 「……照れてる?」 「…う、うん……何か……改めて言われると……」 ふふ、と葉が笑う。 「可愛いね、亜朗♪」 チュ、とオデコに葉の唇が当たる。 「……ぁ……」 一瞬で離れた葉の顔を、つい目で追い掛けてしまった。 『好きな子』って言われたせいか、何だか葉から目が離せない。 「……っ……ほ、ほら、早く着替えちゃって?……誰か来たら嫌だし、僕ドア見てるから」 俺と目が合って、ほんの少し驚いた顔をした葉が、スッと両手を壁から離して、更衣室のドアへと向かう。 「あの顔……やば…。触ってないのに止まらなくなりそー……やべやべ……危険だわー……」 ガシガシと頭を掻き、何やらブツブツ言いながら、足早にドアへと向かう葉の後ろ姿を見送る。 ………あ。 ………この状況…………着替えなきゃ戻れない感じ?
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