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「はい♪これに着替えて?」
ニコニコ笑顔の葉に手渡されたのは、葉のTシャツだった。
「え……何で……?」
「僕の亜朗着たらおっきいでしょ?丈も長いから、ジャンプしても腹チラしないよ♪」
…………そういう事か………。
「いいよ…、ジャージ着とくから」
そう言って葉にTシャツを返そうとすると、またグイ、と手を引かれて更衣室の隅に連れて行かれた。
トン…━━━
肩を押されて、背中が壁に付く。
「はい、どうぞ♪着替えて?」
俺の左右に両手を付いて、逃げられないようにされた。
「……え、何なに?」
「……壁ドンされてる!?」
数人いた生徒が興味津々に、こっちの様子を窺う。
「………………見てんじゃねぇぞ…………」
低い声でチラッとそっちを見て葉が言う。
「……っ!怖っ!」
「い、行こ……」
バタバタと更衣室を出て行ってしまった。
「よ、葉……っ!」
あんな態度取らなくても、と思い葉の名前を呼ぶ。
「今から亜朗着替えるのに、見せたくないでしょ?」
ニコニコと、俺には笑顔の葉。
……もう、ホント可愛い。
「亜朗、熱中症になるかも、って考え足りなくてごめんね?」
「ダメだね、僕。あろ……好きな子の事なのに、そこに配慮できないなんて……」
コツ、とオデコがぶつかる。
「…………ょ…ぅ…」
…………い、い、今……『好きな子』……って……。
……お、俺……なんだよね……?
な、何か…………照れる……。
「……照れてる?」
「…う、うん……何か……改めて言われると……」
ふふ、と葉が笑う。
「可愛いね、亜朗♪」
チュ、とオデコに葉の唇が当たる。
「……ぁ……」
一瞬で離れた葉の顔を、つい目で追い掛けてしまった。
『好きな子』って言われたせいか、何だか葉から目が離せない。
「……っ……ほ、ほら、早く着替えちゃって?……誰か来たら嫌だし、僕ドア見てるから」
俺と目が合って、ほんの少し驚いた顔をした葉が、スッと両手を壁から離して、更衣室のドアへと向かう。
「あの顔……やば…。触ってないのに止まらなくなりそー……やべやべ……危険だわー……」
ガシガシと頭を掻き、何やらブツブツ言いながら、足早にドアへと向かう葉の後ろ姿を見送る。
………あ。
………この状況…………着替えなきゃ戻れない感じ?
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