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チラッと小林が体育館の横の、グラウンドに抜けられる引き戸に視線を送る。
そこには、内部生らしき生徒が数人偵察に来ていた。
あ、悠真がいる!
悠真の方も、俺に気付いたのか、パッと目が合ったので、ちょっと手を振ってみる。
すると悠真は、はにかんで手を振り返してくれた。
…………そして何故か一緒にいたメンバーに小突かれていた……。
「……あー……何かもやっとするねぇ、釉ちゃん?」
「そうだねぇ、小林クン?」
……何故かこっちでは、釉と小林を始め、チームメイトの5人がほっぺたをひきつらせている。
「……どしたの?急に……」
俺が小首を傾げて聞けば、5人は揃って俺を見て、ふにゃりと笑った。
「いいんだよー、亜朗は気にしなくてー」
「そうそう、桜岡は俺らにどんどんトス上げてなー?」
「俺ら、今すげー良いコントロールで打てる気がするから」
……な、何だ……?
不思議に思いつつも、練習試合が始まったので、俺は軽くまずは釉にトスを上げる。
「釉っっ!!」
「はいよっっ!!」
ズバンッッッ!!━━━━━━━━
「うわっっ!!」
「ギャー危ねぇっ!」
………………え……?
「アウトッッッ!!」
釉の打ったスパイクは、大きくコートをはみ出して、悠真達の足元に突き刺さる勢いで落ちた。
「ゆ、釉……っ!どうしたのっ!?」
「あれ~ぇ?おっかしいなぁ?」
慌てて駆け寄る俺に、釉はとぼけた返事。
「桜岡っ!次俺に上げてっ!!」
小林に言われて、釉が気になりつつも試合を再開し、今度は小林にトスを上げた。
ズドンッッッ!!━━━━━━━
「またかよっ!!」
「怖ぇって!!」
………………ちょ、……何で小林まで…………。
小林のスパイクも、釉と同じ場所に落ちた。
その後、残りの3人にもトスを上げるも、皆同じ場所にスパイクが落ちる。
「ちょっと皆、何やってんのさーー!」
思わず俺が叫ぶと、5人は何故かスッキリした表情をしていた。
とにかく悠真達に謝ろうと思って、戸口を振り返ったが、もうそこには悠真達の姿はなかった。
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