*** 好きな子 2 ***

4/10
前へ
/2994ページ
次へ
チラッと小林が体育館の横の、グラウンドに抜けられる引き戸に視線を送る。 そこには、内部生らしき生徒が数人偵察に来ていた。 あ、悠真がいる! 悠真の方も、俺に気付いたのか、パッと目が合ったので、ちょっと手を振ってみる。 すると悠真は、はにかんで手を振り返してくれた。 …………そして何故か一緒にいたメンバーに小突かれていた……。 「……あー……何かもやっとするねぇ、釉ちゃん?」 「そうだねぇ、小林クン?」 ……何故かこっちでは、釉と小林を始め、チームメイトの5人がほっぺたをひきつらせている。 「……どしたの?急に……」 俺が小首を傾げて聞けば、5人は揃って俺を見て、ふにゃりと笑った。 「いいんだよー、亜朗は気にしなくてー」 「そうそう、桜岡は俺らにどんどんトス上げてなー?」 「俺ら、今すげー良いコントロールで打てる気がするから」 ……な、何だ……? 不思議に思いつつも、練習試合が始まったので、俺は軽くまずは釉にトスを上げる。 「釉っっ!!」 「はいよっっ!!」 ズバンッッッ!!━━━━━━━━ 「うわっっ!!」 「ギャー危ねぇっ!」 ………………え……? 「アウトッッッ!!」 釉の打ったスパイクは、大きくコートをはみ出して、悠真達の足元に突き刺さる勢いで落ちた。 「ゆ、釉……っ!どうしたのっ!?」 「あれ~ぇ?おっかしいなぁ?」 慌てて駆け寄る俺に、釉はとぼけた返事。 「桜岡っ!次俺に上げてっ!!」 小林に言われて、釉が気になりつつも試合を再開し、今度は小林にトスを上げた。 ズドンッッッ!!━━━━━━━ 「またかよっ!!」 「怖ぇって!!」 ………………ちょ、……何で小林まで…………。 小林のスパイクも、釉と同じ場所に落ちた。 その後、残りの3人にもトスを上げるも、皆同じ場所にスパイクが落ちる。 「ちょっと皆、何やってんのさーー!」 思わず俺が叫ぶと、5人は何故かスッキリした表情をしていた。 とにかく悠真達に謝ろうと思って、戸口を振り返ったが、もうそこには悠真達の姿はなかった。
/2994ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3772人が本棚に入れています
本棚に追加