*** 好きな子 2 ***

5/10
前へ
/2994ページ
次へ
「……怒ってんの?」 俺は釉をジトッ、と睨み付けている。 練習試合が終わって、コートサイドで水分補給をしながら、釉が俺に聞いて来る。 あの後、釉はバレー部顔負けの動きを見せて、試合はストレート勝ち。 コントロール間違えて、悠真達の足元にスパイクが行ってしまったとは思えない。 「わざとでしょ…!」 頭からタオルを被り、膝を立てて座っている釉の足の間にグイッ、と入り込み、問い詰める。 「……近いよ……亜朗」 困った様に笑う釉に、俺はまた少し詰め寄る。 「こら、話し逸らさないの。わざと悠真達に向けて打ったでしょ」 ムムム、と睨み付ければ、釉はニヤリと笑った。 パサッ…━━━━━━ 釉がタオルを俺の頭に掛ける。 「な、に?」 トン、と俺の両肩に釉の腕が乗り、首の後ろで指が組まれて、身動きが取れなくなった。 「……だってさ?自分の『好きな子』が他の男に可愛い笑顔で手ぇ振ってんの見たらさ、俺だってヤキモチくらい焼くと思わない?」 ねぇ?と首を傾げる釉。 ……っ! ……ゆ、釉も……すす、『好きな子』って……言った……!? カァァァ、と顔が赤くなるのが分かる。 「あはっ、真っ赤だよ♪亜朗」 可愛いね?と、微笑む釉の顔を直視出来なくて、釉の手のせいで顔を背ける事が出来ないから、とりあえず俯く。 「……ドキドキしちゃった?」 返事はしない。 すると釉は、肯定と受け止めたのか、「ドキドキさせちゃったかぁ♪」と嬉しそうに呟いた。 「こらこら、何イチャイチャしてんだよっ!」 小林の声がしたと思ったら、バサッ!と頭からタオルを取られた。 「……っ……!」 思わず小林を見上げると、その場にいた小林とチームメイトの4人が、何故かやたら驚いた顔をした。 そして直ぐに半眼。 「「「「……………釉ちゃん……」」」」 呆れた様に、揃って俺を見ながら4人は呟く。 「返せっ、見んなっ!」 小林の手からタオルを奪い返すと、また俺の頭からそれを掛ける釉。 「…………」 ……何か……頭回んない……。 ただ、心臓がドキドキしてるのだけ、分かる……。 「ぅ~~……」 唸りながらタオルをギュッ、と握って釉を睨むと、釉は楽しそうに、クスクス笑った。 …………もー…………その笑顔……可愛い…………。 ……俺、バカ……?
/2994ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3784人が本棚に入れています
本棚に追加