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「……怒ってんの?」
俺は釉をジトッ、と睨み付けている。
練習試合が終わって、コートサイドで水分補給をしながら、釉が俺に聞いて来る。
あの後、釉はバレー部顔負けの動きを見せて、試合はストレート勝ち。
コントロール間違えて、悠真達の足元にスパイクが行ってしまったとは思えない。
「わざとでしょ…!」
頭からタオルを被り、膝を立てて座っている釉の足の間にグイッ、と入り込み、問い詰める。
「……近いよ……亜朗」
困った様に笑う釉に、俺はまた少し詰め寄る。
「こら、話し逸らさないの。わざと悠真達に向けて打ったでしょ」
ムムム、と睨み付ければ、釉はニヤリと笑った。
パサッ…━━━━━━
釉がタオルを俺の頭に掛ける。
「な、に?」
トン、と俺の両肩に釉の腕が乗り、首の後ろで指が組まれて、身動きが取れなくなった。
「……だってさ?自分の『好きな子』が他の男に可愛い笑顔で手ぇ振ってんの見たらさ、俺だってヤキモチくらい焼くと思わない?」
ねぇ?と首を傾げる釉。
……っ!
……ゆ、釉も……すす、『好きな子』って……言った……!?
カァァァ、と顔が赤くなるのが分かる。
「あはっ、真っ赤だよ♪亜朗」
可愛いね?と、微笑む釉の顔を直視出来なくて、釉の手のせいで顔を背ける事が出来ないから、とりあえず俯く。
「……ドキドキしちゃった?」
返事はしない。
すると釉は、肯定と受け止めたのか、「ドキドキさせちゃったかぁ♪」と嬉しそうに呟いた。
「こらこら、何イチャイチャしてんだよっ!」
小林の声がしたと思ったら、バサッ!と頭からタオルを取られた。
「……っ……!」
思わず小林を見上げると、その場にいた小林とチームメイトの4人が、何故かやたら驚いた顔をした。
そして直ぐに半眼。
「「「「……………釉ちゃん……」」」」
呆れた様に、揃って俺を見ながら4人は呟く。
「返せっ、見んなっ!」
小林の手からタオルを奪い返すと、また俺の頭からそれを掛ける釉。
「…………」
……何か……頭回んない……。
ただ、心臓がドキドキしてるのだけ、分かる……。
「ぅ~~……」
唸りながらタオルをギュッ、と握って釉を睨むと、釉は楽しそうに、クスクス笑った。
…………もー…………その笑顔……可愛い…………。
……俺、バカ……?
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