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「…亜朗、サッカーの試合、次だから迎えに来た」
ヒョコ、と想が戸口から顔を出す。
「あ♪想ー♪」
釉が楽しそうに想に手招きをした。
「何?」
「ちょっと耳貸して」
「……何さ」
靴を脱いで、想が体育館内にトコトコ入って来ると、釉は突然タオルで俺の頭をササッと包んで顎の下でキュッと結ぶ。
………………何これ……。
完全におかしいでしょ……。
結び目をほどこうとして、顎の下でモゾモゾ指を動かしながら、釉と想を見る。
釉に耳打ちされながら、想が俺を見て笑う。
……俺がなかなか結び目を解せないのを笑ってるな?
想の耳元から顔を離して、釉が想の肩を叩く。
……お、ほどけそう……♪
……よっし!
「へぇ~♪そうなんだ…♪」
タオルを外した瞬間、聞こえて来たのは想の意地悪そうな声。
嫌な予感がして、バッ!と想と釉を見れば、案の定ニヤニヤ笑う2人が俺を見ていた。
………………何なのさ……っ!
「じゃ、とりあえず亜朗貰ってくよ」
俺が手に持っていたタオルを取り上げて釉に放り投げた想が、俺の肩をポン、と叩く。
「行こっか?」
ニコッといつもみたいに笑う想に、何だかホッとする。
「うん♪じゃーね、サッカーの方いってきます!」
釉と小林達に手を振って、歩き出した想を追い掛けた。
「あれ?千尋と湊斗は?」
サッカーに出るのは、俺と千尋と想と湊斗。
今、2つあるサッカーコートでは、内部生と外部生が1つずつ使用して試合中。
今日の放課後は、1年生が好きなだけここのグラウンドを使って良い事になっている。
学校から少し離れた敷地に、あと2つグラウンドがあって、今日は2年生と3年生はそっちで練習中。
ちなみに日替わり交代制。
「さっき純介先輩が大量のサッカーボール運んでて、それ手伝いに行ったよ。俺は亜朗のお迎え係で残った」
芝生の上に座り、自分の隣をポンポン、と叩いて俺を呼ぶ。
「第2グラウンドまで行ったの?」
「多分ね」
「そっか」
想の隣にストン、と座る。
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