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…………想は、釉と葉に比べたら口数…というか、話す言葉数が少ない。
だからかな……何か落ち着く……。
目の前では、外部生のGクラスとKクラスのサッカーの練習試合が行われている。
その光景を、お互い無言で見詰める。
さわさわ、と心地好い風が吹いて、俺はさっきまでのドキドキが落ち着いて、穏やかな気分になってきた。
…………やっぱり、想との無言の時間は、気分が落ち着くなぁ……。
チラリ、と隣の想を見れば、俺の視線に気付いてこっちを見た想と目が合った。
「……ん?どうしたの?」
想がニコッと微笑んでくれた。
「…想といると、落ち着くなぁ、と思ってた」
自然と笑みが溢れる。
「そぅ?嬉しいよ」
想の大きな手で柔らかく頭を撫でられて、その気持ち良さに目を閉じる。
「亜朗くんっ!」
名前を呼ばれて、ぱち、と目を開ける。
聞き覚えのある声に、声の聞こえた後ろを振り返ると、フェンスの向こうに奏多がいて、俺に手を振っていた。
「奏多っ!」
俺は立ち上がり、奏多の所に走って行く。
「何か久々な気がするねー」
「ホントだねっ」
2人で笑う。
「亜朗くん、サッカー出るの?」
奏多に聞かれて俺は頷いた。
「うん、一応ね。あまり得意じゃないんだけど。奏多は?」
「僕もサッカー出るよ♪今は外部生クラスの偵察に来たんだ」
奏多が堂々と偵察、と言ってしまうと、奏多と一緒にいた奏多のチームメイトがガク、と肩を落とす。
初めて会った人だな、と思って挨拶をする。
向こうも気さくに挨拶をしてくれたので、内部外部の拘りの無い人達なんだな、と分かる。
フェンスを挟んで、少し楽しく喋っていたら、突然目の前の奏多の目が見開かれた。
俺の背後を見ている。
「亜朗くんっっ!後ろっっ!」
「え…」
「亜朗ッッッ!!」
想の焦った様な声に振り返ると、サッカーボールが見事に俺に向かって飛んで来ていた。
というか、もう、目の前。
……当たるっっ…………っ!!
ガバッッ!!━━━━━━━
大きい何かに、包まれた。
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