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ボンッッ!!━━━━━━━━━
サッカーボールが何かに当たって跳ねる音がした。
……俺に、直接の衝撃は無いけど、僅かに伝わってきた……………。
……ギュッ、と目を瞑っていたけど……。
想の香水の匂いに包まれている。
「そ、想…っ!?」
俺を大事そうに、頭から覆い被さって抱え込んでくれてる人の名前を呼ぶ。
「亜朗……良かった……」
至近距離に想の顔があって、その顔が安心した様に笑った。
「想っ!大丈夫っ!?ど、どこに…当た…っ」
俺は想が心配で、想の体にしがみついて、想の目を見詰めて問う。
「うん……大丈夫、肩に当たっただけだから」
しがみつく俺を、ギュッと抱き締めてくれた。
想の声がいつもと変わらないので、俺はホッとして想の腕にしがみついたまま、項垂れる。
…………良かった……。
………………俺のせいで、怪我しなくて……。
…………傷付けなくて…………良かった……。
……あ、……ヤバい…………震える………。
震えが想に伝わるとマズイと思って、想から体を離そうとした。
「…良か」
グイッ!━━━━━━━━━
想が俺の肩を抱いたまま突然グラウンドを振り返る。
「……今蹴ったの、誰かな?さっさと名乗り出なよ……?」
グラウンドに向かって想が発した言葉が、やけに通った。
静かに怒ってるのが、水が滲む様に周囲に伝わる。
……想…………何で……そんな…………。
「ご、ごめん……俺……」
Kクラスの、研修旅行で班長をやってた鈴木が申し訳なさそうに一歩前に歩み出る。
「……す~ず~き~~~……」
「ホンットにごめんっっ!!完全にすっぽぬけたっっ!!」
パンッ!と目の前で両手を合わせて謝ってくる。
「想……わざとじゃないんだから、そんなに怒らないであげて…」
何だか想の様子がいつもと違って、俺は震える手で想の腕をギュッと掴む。
そんな俺をジッと見詰める想。
「…………………………一応保健室行く。亜朗、着いて来て」
俺の肩を抱いたまま、想がスタスタと歩き出す。
「奏多まだここにいる?もし千尋と湊斗戻って来たら、保健室にいるって伝えといて?」
「うんっ、分かった…!」
歩きながら少し振り返り、立ち竦んでいた奏多に想が伝言を頼むと、奏多の声が追い掛けて来た。
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