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保健室で竹内先生に肩を見て貰う想の側を離れられない。
「竹内先生、どうですかっ…?」
「赤くなってるだけで、何ともないですよ?頑丈ですね」
不安そうな俺を安心させる様に、笑顔で答えてくれる竹内先生。
念の為、と湿布を貼って貰った想がTシャツを頭から被って袖を通す。
「ご、ごめんね、想……何ともなくて良か……ぅぷ」
言い終わらない内に、椅子から立ち上がった想が俺の腕を引き、胸の中に抱き締める。
「…何で亜朗が謝るのさ?悪いのは下手くそな鈴木でしょ?」
俺は身動ぎして、想の腕から逃れようとする。
……まだ、震えてるから……。
「でも……、俺が気を付けてれば…っ!」
想の腕に力が籠り、俺が離れようとするのを許さない。
「気を付けるも何も、普通あんな勢いでボール飛んで来るなんて思わないよ」
「で、でも…っ…!」
……………それでも……想が怪我しそうになった……。
はぁ…、と想が呆れた様に、溜め息を吐く。
「……もう黙んなよ、亜朗」
溜め息と共に、想は俺の後頭部に手を遣り、ギュッと自分の胸に俺の顔を押し付けると、言葉通りに俺は口を塞がれて喋れなくなる。
「大丈夫だから………どうせなら、ごめんじゃなくて、ありがとうって言ってよ……」
想の大きな手で頭を撫でられる。
「……もー、何から言っていいか分かんないけど…………とにかく、俺だって男なんだから、自分の『好きな子』1人守るくらい余裕なんだよ?」
………………っ!
想が俺の頭を撫で続ける。
……ま、また………っ……。
…………『好きな子』、出た…………。
「……っ……」
心臓がキュウ…、と切なく締め付けられる。
…………ドキドキする…………。
「ふふっ、想君は本当に桜岡君の事、大好きなんですね」
…………!!
竹内先生の声に、俺は先生の存在を漸く思い出す。
……みっ、見られてた……よね……!?
今のやり取りが恥ずかしくて、とパッと想の胸から顔を離す。
「あらら、随分な表情ですねぇ」
クスクスと竹内先生が笑う。
…………俺、今どんな顔してるの……?
恥ずかしさで、俺は両手で自分の顔を覆う。
「……見ないで下さい……」
呟くと、竹内先生は楽しそうに笑った。
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