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別に特に何の危険もない。
大地さんによると、十数年続いて来た両生徒会の仕組みに、保護者から苦情が入るようになって来たらしい。
年に2、3件らしいけど、このまま放っておく訳にはいかないから、保護者が気にしてるのか、それとも生徒自体が強く不満に思っているのか、それを知りたいとの事。
そもそも、大地さんがこの学園の理事長になったの自体が去年。
義父さんからは偏差値をもっと上げる様に、とミッションを貰っているそうで、両生徒会の件で躓いている場合ではない、と半べそ……。
「千尋。俺無理しないし、千尋と三つ子と湊斗もちゃんと頼るよ?」
ね?と笑顔を向ければ、千尋は漸く少し笑ってくれた。
「ん、絶対そうして?」
「うん♪」
話しながら理事長室の前を離れ、廊下の角を曲がろうとしたその時。
ドンッ!━━━━━━━━━━
「……わっ!」
「亜朗っ!!」
千尋が体を支えてくれる。
角から現れた人と思い切りぶつかってしまったっぽい。
「っと、悪いっ!大丈夫か?」
「ゃ、こっちこそスミマセン!」
千尋と同じ位の身長で、いかにもスポーツやってますって感じの体格。
「怪我はないか?」
「はい、大丈夫です」
ネクタイがチャコールグレーで、刺繍が黒。
3年生で外部生。
相手も俺と千尋のネクタイにチラッと視線を移す。
「ホントにすまない、怪我なくて良かった」
「先輩は大丈夫ですか?」
千尋が聞くと、その先輩はニコッと笑った。
「大丈夫だ。この見た目だしな」
笑った顔が子供みたいで、可愛い人だ。
先輩は別れ際に俺と千尋を交互に見ると、千尋の肩にポンッと手を置いて、「可愛い恋人だな」と笑って去って行った。
「恋人だってさ♪」
「……何喜んでんのさ」
さっきまでイライラしてた筈の千尋が、先輩の一言で上機嫌になってる。
…………良かった♪
そんな千尋にホッとして、言葉とは裏腹に俺も笑顔になる。
角を曲がって少し行った所で、1人立ち尽くしてる生徒の後ろ姿を発見。
その足元にはスマホが落ちている。
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