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でも…………ネクタイ見て気付いた。
この子、内部生だ。
あー……だから隣の友達は止めようとしたんだね。
「こ、これ、どうぞ」
そう言って差し出されたのは、ご飯の乗ったトレー。
トレーの上にはガパオライス。
「え?え?何でっ?どうして?」
訳が分からない。
何で初対面なのに、ガパオライスを譲られる展開になるの!?
「ぁ…ぁの……俺、ぇーと……」
凄く言いづらそうに、でも何かを伝えたそうにする奏多くん。
………!……分かったっっ!!
そうだったんだ!
「ありがとう。じゃあ遠慮なく受け取るね?えーと……奏多くんはこっちの照り焼きでいい?」
厨房のお兄さんが、お待たせー、と丁度出してくれたので差し出してみる。
ちょっと図々しいかと思ったけど、奏多くん、と下の名前で呼ばなきゃいけない。
「ぁ、うん!全然良いよっ!」
受け取ると言った俺に嬉しそうに笑う奏多くん。
一連の様子を見ていた隣の友達はホッとしたようで、俺に軽く会釈をしてくれた。
「何この空気?」
突然、テーブルに着いてる生徒から声が上がった。
「外部生と同じ場所で飯食ってるだけでもムカつくのに、何で内部生と外部生が仲良く喋ってるとこ見せられなきゃいけねんだよっ!」
学食内の視線が全てその人物に集まった事に気を良くしたのか、その人物は喋り続ける。
「河野だったっけ?オマエさぁ、講堂で庇って貰ったからって、気ぃ許しすぎなんじゃねーの?」
…………こいつっっ!!
わざと『河野』って名前と、講堂の事っっ!!
サッと顔が蒼くなり、俯く奏多くん。
唇はギュ、と噛み締められて白くなっている。
……その唇が少し、震えていた。
「河野、前から外部の奴に気ぃ許すとこあったけど、そんなに外部の男にキョーミあんの?」
プチンッ!━━━━━━━━━━
バカにしたような笑い方に、俺の堪忍袋の尾は完全に千切れました。はい。
「……あのさぁ、君こそ何なの?さっきから俺が今ここの主役です、みたいな顔して喋っちゃってさ。見てるこっちが恥ずかしいんだけど」
ゆっくり近付きながら言う。
「なっ…!」
余程恥ずかしかったのか、顔が赤くなった。
「今のアンタの発言でバレちゃったから、もう言うけどさ、奏多くんが隠したかったの、分かるよね?」
目の前に立って、相手を見下ろす。
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