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「ほら、想。釉も。葉も亜朗を離してあげな?」
俺の父親・晋一朗(シンイチロウ)が三つ子を優しく宥める。
「亜朗。チャンスは一回、説得に失敗したら大人しく同じ志望校にする。…約束守れるわよね?」
母親・夏々(ナナ)に言われ、この大人達は端から俺が三つ子の説得に失敗するのが分かってたのだろう、と理解する。
「……了解デス」
「「「あーちゃんっ!!」」」
父さんに宥められグスグスいってた三つ子は、俺の了承の言葉に瞬時に反応し、また俺に抱き付き……団子状態に逆戻り。
「フッ………亜朗、みっちゃん、相変わらずだな?」
玄関からリビングに繋がるドアがいつの間にか開いていて、久し振りに聞く声が苦笑してる。
しかも三つ子をまとめて、三つ子だから「みっちゃん」て呼ぶのは1人だけ。
葉の腕の隙間からドアの方を覗くと…。
「千尋ーーーー!」
「「「千尋っっ?」」」
「おぅ♪」
俺と三つ子が名前を呼ぶと、ニッコリ笑って近付いて来る。
「お邪魔するよー!」
「スミレさん、夏々ぁ、どうだったぁ?」
続けて千尋の父親・太陽(タイヨウ)パパと母親・香名子(カナコ)さんがリビングに入って来た。
「「大失敗!!」」
「やっぱり~?」
ケラケラ笑う香名子さん。
………くそー、やっぱり全員そう思ってたのかっ!
「亜朗、俺も同じ高校行くからさ。みっちゃんとまだ近くに居てあげなよ?」
ベリベリっと音がするんじゃないかって勢いで、俺から三つ子を引き剥がす千尋。
うん、言ってる事とやってる事が真逆だよね?
「んー、久し振りの亜朗♪」
ギュッ、と千尋に抱き締められる。
……また背ぇ伸びてる。
もうスッポリ、って表現ぴったり。
「千尋、独り占め禁止っ!」
「皆の亜朗だよー?」
「千尋、ズルイ……!」
千尋の来てるコートをグイグイ引っ張る三つ子。
「うるせー。俺が留学してる間、亜朗にベッタリだったんだから、今は譲れ!」
ドカカカっと千尋の長い足で綺麗に足払いされて転がる三つ子に、俺は思わず笑ってしまう。
「ホントも~、千尋も三つ子も!そんなに俺の事好きなのっ!?」
そんな俺の言葉に、千尋と三つ子はふんわり笑顔を見せる。
「「「「当たり前っ!」」」」
その言葉に大人6人の爆笑がリビングに響いた。
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