*** 傷 ***

3/3
前へ
/2994ページ
次へ
バタンッッ!!━━━━━━━━━━ 「亜朗ッッ!!」 千尋が血相を変えて部屋に飛び込んで来た。 その後ろには動揺する湊斗。 「ッッ!!」 湊斗が上半身裸の俺を見て、顔が青ざめた。 「お前らっ!亜朗にナニしてんだっっ!」 「湊斗やめてっっ!!」 激昂する湊斗が怒鳴るのを大声で止める。 「なっ……!亜朗だって泣いてんじゃん!何で止めんだよっ!」 今にも三つ子に飛び掛かろうとする湊斗を、千尋の腕が遮る。 「………千尋?」 怪訝そうな湊斗。 無言でスタスタと俺に近付くと、千尋は側に落ちてたカーディガンを肩から掛けてくれた。 「………風邪、引くから……」 そう言って、俺の涙をちょっと乱暴に拭う。 俺はそんな千尋をじっと見詰める。 「……そんな顔すんな。大丈夫だから……」 優しい声でそう言われて、折角拭って貰った涙がまた溢れて来る。 「……泣くなよ、亜朗……。大丈夫、大丈夫だよ……?」 ふわっ、と両手で千尋に抱き締められ、大丈夫と言われた言葉が心に沁みて、体が震える。 「……ぅ………ぅあぁぁぁ………」 千尋の胸に抱き付いて、声を出して泣く。 「ぉ、俺…っ、ど、したら……」 「ぅん」 「こ、こん…な、に……っ」 「うん」 「ヒック………傷…、付け………っ…」 「……うん」 優しく頭を撫でられ、涙がどんどん溢れて止まらない。 「あーちゃ……っ」 「泣かないで……」 「……ごめん……ごめんなさい……」 三つ子の声が聞こえる。 三つ子は悪くないよ。 俺が、全部悪いんだ。 だから三つ子は泣かないで。
/2994ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3783人が本棚に入れています
本棚に追加