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「………風邪、引くから……」
「……そんな顔すんな。大丈夫だから……」
千尋の慈しむ様な声に、亜朗はポロポロ涙を溢す。
「……泣くな、亜朗……。大丈夫、大丈夫だよ……?」
壊れ物を扱うみたいに、優しく亜朗を抱き締める千尋。
すると亜朗は千尋の背中に腕を回して、ギュッとブレザーを握り締め、悲鳴を上げるようにして泣き出した。
「……ぅ………ぅあぁぁぁ………」
破れるんじゃないかって位に千尋のブレザーを握る亜朗の手は、痛々しい程にガタガタと震えている。
「ぉ、俺…っ、ど、したら……」
「ぅん」
「こ、こん…な、に……っ」
「うん」
「ヒック………傷…、付け………っ…」
「……うん」
泣きながら何かを懺悔する様な亜朗を、千尋は掻き抱き頭を優しく撫でる。
「あーちゃ……」
「泣かないで……」
「……ごめん……ごめんなさい……」
周りでは、三つ子が亜朗のその様子に号泣していた。
ちょっ…と、ホントに……。
……一体、何が起こってるんだ……?
亜朗と三つ子の関係って、ただの幼なじみじゃないのか……?
「……説明、して貰えるのか?」
俺がそう千尋に問い掛けると、千尋は悲しそうに微笑んで頷いた。
今、亜朗は泣き疲れ、千尋に包まれる様にして眠っている。
三つ子は眠っている亜朗を心配そうに見詰めながら、大人しくソファに3人並んで座っていた。
「湊斗、これから話す事は絶対に誰にも言わないって約束して?」
当たり前だ。
「絶対に言わない」
俺の力強い言葉に、千尋は頷くと三つ子に視線を移す。
「みっちゃんは、障害があるんだ」
……え?
「……ぜ、全然……そんな風には……」
見えない。
「身体の、じゃなくて、心の方」
「……心、の………?」
千尋は、うん、と頷くとその障害の名前を告げる。
「分離不安障害」
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