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千尋の説明によると、自分の大切な人や愛しい人、愛着のある場所等々、そこから遠くに離れてしまう事に異常な恐怖や、体の不調を示す事らしい。
同時に、大切な人が怪我をするかも、とか交通事故に遭ってしまうかも、とかの不安にも襲われる、という場合もあるようだ。
そして三つ子の場合は、それが元になって精神的に恐怖と不安が限界を超えると、亜朗の存在を確認する行為に走ってしまうのだと。
三つ子にとって亜朗の存在は、そんなにも大きい物なのか……と、少し恐くなる。
「そ、んな……」
緊張して聞いていたせいか、喉が乾燥して声が上手く出せない。
「げ、原因、て……な、に」
何?と聞きかけて、言葉を失う。
さっきの亜朗……。
俺のせいだ、と言うかの様に泣いてなかった?
……まさか、亜朗が……原因……?
「……こんな事、おかしいって…分かってる……」
「……分かってても………亜朗が危ない目に、って思ったら……」
「………っ抑えられないんだ…怖くて、怖くて……」
そうなったら、もう自分でもコントロールが出来ないんだろう……。
今の三つ子は、さっきの様な変な空気では無い。
「亜朗は、そんな三つ子を真正面から受け止めるんだよ……。それがどんなに自分を傷付けて、苦しくても……決してみっちゃんから逃げない……」
そうか…………。
そうだったのか…………。
……「あーちゃん」て呼ぶ時は、精神的に結構キテる時だったんだ……。
そして千尋は、自分が出来る限り、亜朗が傷付かない様にしたいんだ……。
「ぅ……ん……」
亜朗が身動ぎをする。
今にも目を覚ましそう。
俺も含め、そこにいた全員がこれ以上は話すのを止めた。
若干慣れている様にも思えた千尋の対応。
今までも、何度かこういう事があったんだろう。
亜朗が三つ子を受け止めれば受け止める程、三つ子は自分らのした事に傷付き。
三つ子が亜朗を心配すればする程、亜朗は原因を作ったのは自分だと傷付く。
大事に思う程、傷付け合うしかないなんて……。
「…っ……なん、だよ…っ……!そんなのって……!」
俺は堪え切れなくなり、呟いて片手で顔を覆った。
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