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「これはポピーっていう花ですよ」
「あ、聞いた事あります!詳しいんですね」
俺が笑うと、西園寺先輩はまた前みたいに寂しそうに笑った。
「僕も詳しい訳じゃないんです。昔、スッと立つ感じが僕に似てる、って言われた事があって、それで覚えただけで……」
……何でそんなに寂しそうなんだろう。
「それ、言ってくれた人って、素敵な人なんですね?」
「………どうして?」
「花に似てる、なんて素敵な言葉、普通恥ずかしくて言えないですよ。それだけ西園寺先輩の事が好きなんだなぁ、って」
「……っ!」
俺の言葉に、西園寺先輩は驚いて一瞬動揺を見せた。
でも、すぐにまた、悲しそうな顔……。
「……昔の話し、ですから」
………どうしてそんな悲しそうな顔するんですか?
……何が、あったんですか?
そう聞こうとした瞬間。
「西園寺!」
………!
内部生徒会の天山会長……っ!?
俺は咄嗟に花壇の前にしゃがんで、花に熱心な地味な生徒を演じる事にした。
「天山、会長」
西園寺先輩もちょっと慌ててる。
「また、花見てたのか?」
「あ、はい。天山会長は?見廻りですか?」
西園寺先輩がなるべく天山会長の意識を自分に向けるようにしてくれているのが分かる。
「まあ、そんな様なもんかな」
「お昼は食べました?良かったら一緒に食べ」
「それ誰?」
ギクッ!!
天山会長が西園寺先輩の言葉を遮って、俺に興味を示す。
「……花が好きみたいで」
「なぁ、顔見せて?」
俺の隣にしゃがみ込む。
……ま、まずい……。
「あ、天山会長に、キョーミを持って頂ける程の人間ではゴザイマセンので」
「俺が興味を持つか持たないかは、俺が決める。君じゃないよ?」
…………ごもっともです。
天山会長の手が、俺のフードに触れる。
「天山会長っ!」
西園寺先輩の焦った声。
スッとフードが下ろされた。
西園寺先輩ごめんなさいっ!!
「萌え袖チートイケメンの桜岡じゃん」
………………え……?
パッと天山会長を見ると、ニヤリと笑う。
「バーカ。2人してそんなに誤魔化そうとしなくていいって」
立ち上がった天山会長はそう言って笑った。
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