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「千尋とは産まれた時からの付き合いなんだよね♪」
「へー!誕生日近いの?新生児室で一緒でした、みたいな感じ?」
……あ、そっか。同じ学年ならそう思うよね。
「いや、俺のが年齢1つ上。中学卒業した後ちょっと語学留学してて、今年から同学年」
「え?あ、そーなの?あ!じゃ…」
年上と知って慌てる湊斗に、千尋はすぐに言葉を掛ける。
「あ、年上だからって敬語とか無しな?折角知り合えたのに、タメ口から敬語なっちゃうのって、すげー壁感じる」
ニカッと笑って、湊斗の先回りをする千尋。
こういう場面見ると、年上っていうかお兄ちゃんぽいなぁ、って思う。
「……ん、分かった♪……ちなみに、三つ子の方は同い年?」
千尋が1つ上って聞くと、三つ子はどうなんだろう、って気になるよね。
「あっちは正真正銘同い年」
「こら亜朗。俺を偽物みたいに言うなよ」
千尋の手が俺の頭をクシャリ、とする。
「………?何か教室の時と亜朗も千尋も雰囲気違う?」
湊斗が不思議そうに、思った事を口に出す。
「………え……?」
「そう?そんな事ないと思うけど?」
俺が一瞬固まってしまったのを受けて、千尋がパッと湊斗に答える。
何となく聞いちゃ駄目だったかな、っていうのを察した湊斗は「気のせいか♪」と笑った。
ごめんね、湊斗。
湊斗が良い人なのは、何となく分かる。
察してくれたし。
でも、まだ出会ったばかりでもある。
俺と千尋の雰囲気が普通の幼なじみじゃないのは、俺のせい……。
この事は、……言えない……。
ごめんね……。
「ほら2人共、洗濯物~!」
「あ、待って待って!」
「あ、俺もお言葉に甘えます!にーさん!」
「何だよ『にーさん』て!さっき敬語は駄目っつったばっかだろ!」
湊斗のわざとらしい言葉に、千尋が湊斗の頭をグシャグシャに掻き回して笑ってる。
俺も笑って洗濯物持って来るね、とベッドと机のみの小さな自室に向かう。
…………わざとだ……。
わざと思い切り会話の方向転換だよね?
……2人共ありがとう……。
湊斗、いつかちゃんと話すからね。
ごめんね。
…………ホントにごめん、皆…………。
「…っ……」
不意に涙が込み上げて来てしまった。
…………駄目だ、俺が泣いていい事じゃない。
…………俺が傷付いていい事じゃ、ない。
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