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ただ、急な提案は私をひどく不安にさせた。
「ええ、そうね。とてもいい提案だと思う……。けど、少し時間をくれない?少しだけ、一日でいいの。今の気持ちを一度整理しておきたい」
「あぁ、構わない。結論が出た時に電話でもメールでもして伝えてくれ。
いい時間だし、今日はここで別れようか」
そう言った彼は連絡先の載った紙を私に渡して、駅とは反対方向に歩いていった。私の分まで支払いを済ませていたのは最早言うまでもなかった。
時計を見ると十時半、今から行けば昼の仕事から始められる時間だった。
「はぁ、父さん怒らないといいけど……。バイトとはいえこんな休み方は有り得ないしなぁ」
暗雲としてきた私の心とは反対に空は青み始めてきていた。この分だと午後からは気持ちのいい空を迎えられるだろう。
仕事を終え、まだ研究があるからという父を残して私は先に帰宅。自室へ籠ると今日の堂島さんとの行動を一から思い返した。
「そういえば、クロガネモチってなんだったんだろ。別の意味で好きとか言ってたような」
取り敢えず、パソコンを開いてクロガネモチを調べる。何かあるとすれば花言葉ぐらいしか思いつかない。
「ええと、クロガネモチは。魅力、執着、仕掛け……。執着?あんまりいい言葉じゃないな」
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