雲の先にあなたは

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思わず顔をしかめる。ただ、特にピンと来るものがない。これじゃないのかも、男の人が花言葉なんて知らないだろうし……。 フゥと一息ついてから私は椅子を引きずって窓辺に設置。カーテンを引くと吸い込まれるような夜空に星がよく映えていた。 幼い頃か、誰かが雨上がりの星空は綺麗になると教えてくれた。雨によって大気中のチリやホコリが全部洗い流されるからだそうだ。 「通が居なくなって、もう一年か」 宮原 通、私の元の彼氏。輝くヒマワリみたいな笑顔の彼は最後に私に顔を向けた時も笑っていた。そろそろ時期なのかもしれない。空を曇らせる塵芥、これを払わなければいつまでも天上飾る星々のシャンデリアなんてのは現れない。 考えるのは彼、堂島さんの横顔。喫茶店での彼の雨に対する眼差しはとても切なく、私の境遇とのリンクを感じるものだった。彼も私もまだ、過去から抜け出すことはできていないのだろう。新しい心に切り替わっていればどんなに楽だったろうか、残念ながら私はあの日から何も変わってなどいない。 だからこそ、私は自分が許せるだろうか。過去に通を愛したその心で、別の人にまた同じように愛を注ぐことを。半年前、一年前の私は許してくれるのか? そう問い詰めていくとやっぱり少しずつだけど自分は立ち直っていたんだなと気づく。     
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