雲の先にあなたは

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「へぇ、智樹さん株取引してるんだ、いつも何してるのかと思ってたんだけど」 昼、結局雨は止まずに勢いを増してアスファルトを叩いていた。私と智樹さんは個人経営のこじんまりとしたレストランに来ている。場所は蝮山駅のある通り。わざわざ私の職場近くまで来てくれた彼はゆったりとした様子で店内を見渡している。 「まぁ、俺の仕事なんてどうでもいいだろ。それよりこの店、君の行きつけなの? けっこう古めかしい感じだけど」 「父の行きつけで、私も好きな味なんだ。智樹さんにもここのハンバーグ食べてもらいたくて」 レストラン、ドミグラス。親子二代で経営されるこの店は頑固な父親と流行を追う息子が常に争っており、ごくたまに味に壮絶な変化があったりする。 「どうぞ、洋風ハンバーグ二つです。ここのソースが美味いですからね。では、ごゆっくり」 息子の方が料理を持ってきた。彼自慢の逸品なのだろう。早速ナイフを手に取る。 「うん、美味いねこれ。肉に例のおすすめソースがすごく合ってる。ここの看板メニュー? 」 「そうだね。小さい頃からよくここに食べにきてたの、ここのお肉はさっきの人のお父さんがじっくり焼いてるみたいで。ほんと、美味しいよね」     
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