雲の先にあなたは

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意味がよく分からなくてもっとよく聞こうと口を動かすが彼の声に遮られた。 「そういえば、鴨川さんはコーヒーに何入れるの?俺は砂糖だけなんだけど、ミルクが欲しければマスターに頼むよ」 「大丈夫ですよ、私も砂糖だけなんです。いつもミルクを入れてそれに慣れてると、ない時はコーヒーフレッシュを使わなくちゃいけないでしょ? 私、テレビでコーヒーフレッシュは油みたいなものって知ってからあんまり飲みたくないんです」 「へぇ、健康志向なんだね」 「ただ、気持ち悪いってだけですよ。そこまで気にしてるわけじゃ無いです。コーヒーにそれしか入れるものがなくて、ダメならブラックしか飲めないって言われたら喜んで使いますよ。苦いのはもっと嫌なんです」 フフッと彼は笑う。つられて私も微笑む。先程から何度も見ているが、彼は本当にいい笑い方をする。ハッキリと開いた目が笑うたびにくしゃっと潰れて口は下に緩やかなカーブを描く。 とても安心する、無邪気な子供を連想するような笑顔だった。あるいはそれは、通(とおる)の笑い方に似ているからかもしれなかった。     
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