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『もう私は必要ないのかもしれない』と呟きが聞こえた後、彼女は流れ星となった。
「ですが、娘は見ていましたね。母親の軌跡を。願い事はできなかったようですが…」
双子星は、娘を見て思う。
夜になると、いつも空を見上げている年頃の娘。
多感な時期に母親を亡くし、家事に引き受けてきた娘は空を見上げながら、母を思っていた。
年頃の娘を家に縛りたくないと、周囲に勧められるままに再婚をした父親。
自分のために、母を忘れようとして、再婚をしたことを申し訳なく思う娘。
二人の気持ちは、星となった母親には届かなかったのだ。
しかし、母親であった星が流れ星になる様を、幸か不幸か娘は見上げていた。
星となった期間が短いため、願い事をする時間はなかったようだが、娘は知らない間に、母の魂が消えゆくところを見つめていたのだった。
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