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世界が一瞬で、ぐるんと回った。
ほっぺたがカッとなって冷やっとなって、じんわり熱くなって、そこからようやく、じわじわと痛みを感じ始めた。
よくもまぁ、その細腕からそんな力が出せたもんだと改めて彼女を見ると、泣くまいと堪えているのかその目元からは大きな雫が落ちる寸前だった。
あぁ美しいな。
私は当事者だというのに、彼女が小さく批判する声など全く耳に入っていなかった。
ほっぺたは相変わらずじわじわと痛んだが、それよりも彼女の目元で揺れる雫の方が気になって仕方がない。
周りの景色を濃縮して詰め込んだみたいな、複雑な色。
新緑と赤い花の艶めいた姿。
うるうると潤い……
「ちょっと!!聞いてんの!?」
その声でようやく意識を戻した。
「ごめんごめん、聞いてなかった。で、何?」
「何じゃないよ!奈津子の彼氏奪ったでしょ」
当の奈津子は、大声を上げる友人の側で涙を堪えて私を見据えていた。その友人より頭一つ分小さい奈津子だったが、その佇まいは凛としていて、友人と変わりない背丈に見えた。
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