友情と愛情

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その克哉の行動に、私は少しだけ胸がざわついた。 奈津子はきっとこの部屋を訪れるたびに、2人分の飲み物を持った克哉の姿を見ているのだろう。 そう思って少し克哉が遠くなったような気がした。 2つのカップを器用に持ったまま部屋の扉を閉める。 それを私の目の前に置いてから、向かい合って座った自分の前にも置いた。 奈津子と付き合う前の克哉はこんなんじゃなかった。 私が喉が渇いたといって初めて、グラス2つと大きなペットボトルを持って来るような奴だった。 両手がふさがっているからと部屋の扉は足で閉め、テーブルの中央にドカっと置かれたペットボトルから各々好きなだけグラスに注ぐ。 「トモ、紅茶飲めなかったっけ?」 カップを見つめたままの私に克哉が聞く。 「ん、飲めるよ」 「そう。なら良かった」 克哉はいつの間にか少年じゃなくなっていた。 少し大人びた、青年の顔が混じった克哉に私は置いて行かれた気分になった。 カップの紅茶に手をつけずに克哉に聞いた。 私の小さな抵抗。 「奈津子と喧嘩したんだって?」 とたんに克哉はうなだれて 「そうなんだ」 と呟いた。
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