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黙ったままの克哉を私は放っておいて、見慣れた克哉の部屋を見渡していた。
写真立ての克哉と奈津子を見ていた時、克哉がゴクリと紅茶をひと口飲んだのがわかった。
「どうしたらいいかわからないんだ。奈津子みたいな可愛い子が俺と付き合ってくれているのも未だに信じられないし……」
飲み込んだ紅茶の代わりに押し上げられたみたいに克哉の口から言葉がするすると出てきた。
「ん」
私は小さく同意のような相づちを打った。
克哉は再び黙った。
「とりあえず謝れば?」
無責任な言葉が私から出る。
「謝るって言っても、何をしちゃったのかがわからないから、何に対して謝ればいいかわからない」
「でも、奈津子は怒ってんでしょ」
「そうだけど」
私は今すぐにでも帰りたかった。
これ以上、奈津子と克哉の部屋になんかいたくなかった。
「バッカみたい」
そう言って私は克哉のベッドに仰向けで倒れ込んだ。
ボスンと音を立てて克哉の布団が私を包み込む。
「おい、寝るなよ」
克哉は私のその動きを制止するように、寝転がった私の側に座った。
「なんで?いつもしてんじゃん」
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