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「そうだけど……」
さっきからモゴモゴと口ごもる克哉にイライラしていた。
「んじゃいいじゃん」
私は体勢を変えてうつ伏せになると、ポケットからスマホを取りだした。そのまま流行りのパズルゲームを起動して遊び始めた。間の抜けたような機械音が、場の空気に合わない。
緊張をより強めただけのように感じた。
克哉の緊張が伝わってきたが、気づかないフリをした。
「トモ……にしか相談できないから呼んだんだから聞いてよ」
「うん、聞くよ。話してよ。はいどうぞ」
そう言いつつもゲームの手は止めない。
別れさせたい訳ではないし、私と付き合って欲しい訳でもない。けれど、少し大人びた克哉に対する訳のわからない劣等感に襲われて、克哉の方を向けない。
まるで、いじけてうずくまった背中に雨がポツポツと降ってくるように、寝転がった私の背中に、ポツリポツリと克哉の言葉が降ってきた。
「昨日、学校帰りに買い物に行ったんだ」
「あ、昨日の話?」
「そうだよ」
「ごめんごめん、どうぞ続けて」
私は再びうつ伏せでスマホを触り始めた。
「なぁ。聞く気あんの?」
背中越しの声に
「あるよ」
と答えて振り向いたら、克哉の顔は思ったよりも随分と近くにあった。
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