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「いいから、して。じゃないと私、チカちゃんのケツ掘っちゃうかもよ」 「なんで俺のヴァージンとお前の根性焼がフィフティフィフティなんだよ」 「痛みレベルとしては一緒じゃない?」  リスカをしていたことからも伺えるように俺も相当ヤキが回っていたようで、ヤキモチも根性焼も大差ないふうだしじゃあいっちょやってみっか。なあに、キスマークを付けるようなもんさと軽い気持ちで煙草に火を点ける。勿論銘柄はいつものラッキーストライク。  違う違う、と蒼。えっ。違う、こうだよ、ココナッツの果汁飲むみたいに、こう。でもお前、それってかなり熱いぞ。大丈夫だってば、蒼さんだよ?本当かよ、じゃあいくぞ。  まるで蒼の右腕から血を啜る蚊のように、煙草の火種を透き通る肌に押し付けたまま煙を便所臭え肺満タンに吸い上げた。独特なたんぱく質の焦げる匂いは何故だか彼女の骨を想起させる。その骨はきっと赤くて白くて、軽くて弱々しいんだろう。痩せ衰えていく蒼に疲労の翳が差しているのにもとうに気付いていた、にも拘らず、どうあっても俺はただの一高校生としての枠を出ることがないままついに彼女ができる。蒼の腕に、逢瀬の度に一つずつ、火傷を作りながら。     
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