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「なぁなぁそこの金髪のおにーさーん」
関西訛りののんびりした口調。
振り返ると、細い目をした小柄な男性がニコニコとしながら立っていた。
綺麗に染まった銀色の髪の毛先には、微かに青や赤が入っていてその奇抜さゆえ周囲から浮いている。
前髪を女子が使うような星のヘアピンで止めているのが妙にあざとく感じた。
両耳にはぎっしりとピアスが刺さっていて、よく見ると口元にも一つ付いている。
唐突に現れた個性的な男性に俺は思わず身構える。
その手にチラシが握られていることから何かしらのサークルの勧誘であるのだろうが。
「おにーさん、めっちゃ身長高いなぁ。遠くからでもすぐ見つけられて羨ましいわぁ。僕なんてちっこいから迷子になったらお終いやで~」
男性は心底羨ましそうな態度をとった後に肩を竦める。
なんて答えていいか分からず俺が黙っているのもお構い無しだ。
そして思い出したかのように手元の紙チラシを「そやそや」と、差し出した。
「僕たち、音楽同好会ってのやってますのん。先輩は二年生しかおらんし、人数も今のとこ四人だけやからめっちゃ気楽やで。あー、ちょっと個性派揃いやけど。良かったら遊びに来てな」
音楽同好会。
正直普通すぎて少し脱力した。
人を外見で判断しちゃいけません、なんて幼稚園の頃だか先生たちに言われていたけれど。
音楽学部の先輩なのだろうか。
この大学にはいくつかの学部があり、俺が入学した建築学部の他に、美術学部、映像学部、音楽学部がある。
確か美術学部は細かく分かれていて、自分の好きなものを主に学ぶ分野として選べたはずだ。
『橘 星』も美術学部。
専攻はきっと絵画だろうか。
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