21人が本棚に入れています
本棚に追加
◇
オリエンテーションに授業選択、新居の片付け、入学式にて隣の席になり自然と友人となった数人の奴らとの付き合い。
一週間はそれだけであっという間に過ぎ去って行った。
友人たちとも早速話題になったが、結局サークルについては意見もまとまらず。
まぁ、大学生にもなって友人と一緒じゃないと嫌だなんてのもどうかしている。
俺もわざわざチラシを見て吟味してる暇なんてほとんどなかったため、ひとまずあの岡山先輩(であろう人物)が所属する音楽同好会に顔を出してみることにした。
美術学部の新城研究室。
と言われてもたった一週間では大学構内の配置など把握できるわけではなく。
右往左往しているなか漸く前方から人が現れた。
キャンバスにバケツや絵の具や筆、刷毛などを両手一杯に抱えてヨロヨロと覚束無い足取りでその人は向かってきた。
白いTシャツやそこから伸びた細くて白い腕は様々な色をしていて、きっと絵を描き終えた後なのだろうと得心した。
俯き気味で歩いているせいか、無造作に伸びた真っ黒な前髪が邪魔をして顔が良く見えない。
170は有りそうな身長から見て男性にも見えるけれど、白い肌や華奢な体を見ると背の高い女性という線もありえる。
「あ.....あの!」
すれ違いざまに声をかけると、華奢な肩がビクリと震えた。
顔はこちらに向けられることはない。
最初のコメントを投稿しよう!