悪魔の興味

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「キャアアァァァーーー!!」  その悲鳴は近所に響く程、大きく悲痛な叫び声だった。  一軒家としてはそれ程大きな家では無いが、家族三人が暮らすには十分な広さの家だ。隣近所は顔見知りではあるが、それほど近所付き合いが良いという関係では無い。それでも、隣家から悲鳴が聞こえれば飛び出して、声を掛けて来る事には間違いは無い。 「馬場さん!馬場さん!どうしたんだ?」近所に住む世話焼きの初老の男性が悲鳴を聞きつけて馬場家を訪れた。玄関のドアを叩き、中の反応を探る。ドアノブを回すとゆっくりと玄関の扉が開いた。男性は靴を脱いで室内に入る。室内には異様な空気が漂っている。妙な音がキッチンの方から聞こえる。それはカタカタと何かが当たっている音だった。  男性はそっと音のする場所を覗き込むと、若い娘がキッチンの片隅で両足を抱えたまま震えていた。男性は「大丈夫か!」と声を掛けて少女の所へ近づくと、少女は大きく目を見開き、力いっぱいに歯をかみ締めたまま、震える手でキッチンの向こうを指差した。  男性がその指を指している方へ視線を向けると、そこには中年の女性が血の海の中に倒れていた。その傍らには血で汚れた包丁と、開かれたリビングの窓。外から吹くそよ風に白いレースのカーテンが血飛沫に汚れたまま揺れていた。
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