悪魔の興味

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「またぁ・・・。もう、何年も変わらないんだから・・・」と沙和子がいうと、実和子はまたふくれっ面で、「だって!お母さんがいなくなってからずっと、お母さんと同じ味の料理を作ってくれるのはサワちゃんだけだもん」という。  そんな実和子を見つめて、沙和子は母親の気持ちになって「はいはい」といって、その料理に使う材料を買い物カゴに入れた。  冬休みが明けると、沙和子は年明けの年始挨拶に借り出された。本来、自分が行くべきじゃない筈の年始挨拶に何故か、上司と一緒に回る事になったのだ。 「どうして・・・、私なんですか?」と上司に尋ねると、「榊事務官から聞いたよ。君、切り裂きジャックの事件に興味があるらしいね」と上司は答えた。 「興味があるというか・・・、あんな卑劣な事件、許せません」と力強くいうと、上司は「頼もしいね」と微笑みながら返し、「これから行く先は、その事件の捜査本部のある所轄署だ」と教えてくれた。  捜査本部の置かれているF市の警察署内に入ると、妙な緊張感が漂っている。新年早々の仕事始めとは思えない緊張感は、署内の会議室に入ってわかった。  捜査本部にあてがわれている会議室では、年末年始の休みを返上して捜査に当たっている捜査員が、この数日間の間に集めた情報を精査している。その中には遺留品もあれば、犯人に繋がるであろう手がかりもいろいろとあった。     
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