序章

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序章

 まるでおとぎの国に出て来そうな洋館だった。 「どうぞ・・・」と実沙子は案内されるままに中へ入る。玄関から中に入ると、目の前には赤い絨毯が敷かれ左右に広がる廊下に、正面には2階へと続く大きな階段。そして、エントランスの頭の上には巨大なシャンデリアが煌々と明かりを灯している。 「こんな素敵なお屋敷は・・・、初めて見ました・・・」 「実沙子さん。僕と結婚すれば・・・、ここに一緒に住めますよ」と男は素敵な笑顔で屋敷を案内し始めた。  メイドや執事の面々を紹介されながらダイニングへ通される。 「今日は二人分と伝えてあるから、実沙子さんの分も食事はありますよ」と大きな長テーブルに二人は向き合って座ると、執事が順番に料理を運び出した。実沙子にとっては夢の様な世界だ。  早くに両親を亡くし、一人娘だった実沙子を親戚の叔母が引き取って育ててくれた。その叔母も病気で亡くした実沙子にとって、頼れる人はいない。そんなかで出会った紳士。それは、『馬場・デイビス・左門』だった。  彼は実沙子の生い立ちなど全く気にしない。むしろ、今の実沙子の姿、生き様に興味をもったと話す。 「私のどこに興味を持たれたのですか?」と実沙子が尋ねると、屈託のない笑顔で左門は、「あなたの責任感の強さと信念。そして、その美貌に・・・」と恥じらいながら答えた。 「嬉しい・・・」と実沙子は心の底から思って答えた。そして、その夜二人は結ばれた。実沙子にとっては初めて異性との性交であったが、男にとっては何百回めの交配である。そして、この性交によって実沙子は妊娠する。妊娠したことを男に話すと嬉しそうにこう答えた。 「ぜひ、産んでください」 「左門さんはどちらがいいですか?男の子?女の子?」 「いえ、産まれてくるのは双子の女の子です」 「えっ?双子?どうしてそんな事がわかるんですか?」 「それは・・・。僕の願いで神様が聞いてくれたおかげです。一人の予定が半分。双子になりました」 「そんな・・・。半分なんて可愛そう・・・。でも、最初から双子なら育てやすいかも」 「そうですよ」と男は優しい笑顔を見せながら、実沙子を抱いた。
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