コロニー

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するとずっと黙っていた1匹が慌てて言った。 「ま、待ってくれよ。俺、死ぬ時は決めてるんだ。………昔、地面に落ちたアイスクリームで溺れた事がある。危うく死にかけたが、甘くて幸せだったんだ。だから死ぬ時はアイスクリームって決めてるんだ。」 その発言を皮切りに口々に皆話し始めた。 「いいわね、それ。でも溺れるなら私はシャンパンがいいわ。もちろん、デザートシャンパンね。うーん、でも死ぬ前にもう一度カステラを食べたいな。」 「僕はスイカがいいな。人間が棒で割ったやつが飛び散ってさ、運良く大きなかたまりが僕の前に落ちたんだ。僕の上じゃなくて本当に良かった。」 「わしは、色んなものを食べたが、やっぱりキャラメルじゃな。」 りんご飴、クリームパン、どら焼き…アリ達の幸せな話は笑顔いっぱいにしばらく続いた。 「俺は一度、蜂蜜に足を取られて死にそうになった。もがいてようやく抜け出したが、体中が最高に甘くてさ。舐め終わってまた飛び込んだよ。」 皆がゲラゲラ笑って、息切れした。 「はぁはぁ…。あー、可笑しい。……考えてみりゃあさ、こんな水槽の中に一生閉じ込められてちゃ、もう二度とアイスクリームは食べられないだろうな。…それなら同志達の為に死ぬ方がマシかも。」 「…そうだな。そうしよう。あれをアイスクリームと思えばいいさ。」 「あぁ。世界中の同志達の為に。」 意を決してアリ達は穴から出ると、緑色の容器に向かって行った。
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