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「星空を、知りたいです」
選んだ言葉が、感情に響いたことはすぐわかった。見開かれた瞳の奥で、何かがきらりと光ったのだ。
それから。深い皺ごと口角が上がる。この仮想空間で初めて見る、ホルダーの笑顔だった。
「そこまで人間に寄り添うのか、アイオノイドは」
「否。これは、わたしの探求心も含まれています」
「ぜひとも叶えたいところだが、残念ながらこの空間は昼だからな」
太陽が姿を見せ、眩しさのカーテンが空を覆う時間。これでは星の逢瀬は叶わないだろう。
仮想空間を再構築すれば時間を夜にすることができるが、ダンザライトは変更権限を持っていない。権限を所有しているのは上位のアイオノイドだけ。
申請を出し、承認されれば再構築されるだろう。しかしそれには時間がかかる。空間欠損が発生するほどだ、承認された頃はホルダーの時間が切れている可能性が高い。
ダンザライトは答えを出した。ダンザライトの願いは叶わない。星空を見ることはできない。
「否。わたしは難しいことを言ってしまったようです。申し訳ありませ……」
深々と頭を下げて謝罪するが、聞こえたのは意外な言葉だった。
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