呪涙~嘘泣きと号泣のはざまで~

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親友が死んだ時、号泣した・・・。 婆ちゃんが死んだ時、嘘泣きした。 爺ちゃんが死んだ時、嘘泣きした。 親父が死んだ時、嘘泣きした・・・。                     ◆ 俺は今、32歳。それは17歳の時に起こった出来事であった。俺は親友が不慮の事故で亡くなってしまい、その決して晴らせぬ悲しみを胸に抱いて町中を自転車で疾走していた。どこまで、どこまでも走っても悲しみを振り切る事は出来なかった。俺は自転車を止め、俺の住む町が見える高台にある展望台で号泣した。空は夕焼けに染まって、まるで落ちてゆく太陽が親友のたましいの様に思え、しかし、親友のたましいは太陽の様には二度と昇る事はないのだった・・・。 俺は人目も憚らず泣きじゃくった。 するとだった。そんな号泣する俺の肩を誰かがそっと抱いたのだった。 俺はしゃっくりを上げて泣きながらその人物の方を見た。 その人物は現代と言う時代の服装の概念からはおよそ掛け離れた服装で身を包んでいた。服装は黒。黒のとんがり帽子を被り、黒いローブを羽織っていた。まるで・・・魔女の様な服装だった。 その女性は瑠璃色の瞳で俺の目を覗き込みながら口元に微笑を浮かべ優しく言った。 「とても悲しい事があったのね」 見知らぬ赤の他人のはずなのに、その女性は俺を拒絶させない不思議なオーラに包まれているかの様だった。 俺は答えた。 「唯一無二の親友が事故で亡くなったんです」 女性が深く頷いた。 「人生に別れは付き物。それがいかなる形であろうとね。あなたのこれからの人生、大切な人との別れの繰り返し。人生なんてそんなものなのよ」 俺は変に達観したその女性が急に疎ましくなった。 「そんな事を言う為にわざわざ俺に声を掛けたんですか?もう・・俺、これ以上あなたと話したくありません。一人にしておいて下さい」 するとだった。女性はニタリと笑って言った。 「でも・・・本当はもう誰かの死で悲しみたくはないんでしょ。心がズタズタに悲しみで切り裂かれるのなんてもう真っ平なんでしょう?」 確かに女性の言った事は俺の気持ちを代弁してくれている様な気がした。
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