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◆
そして32歳になったある日曜日の事であった。
俺はその日仕事が休みでとあるカフェで珈琲を飲みながら寛いでいた時の事だった。
俺は窓側のカウンター席からただ何となく街行く人の流れを見ていた時の事である。
トントン。
誰かが俺の背中を叩いた。
俺がそちらを振り向く。
一瞬時間が止まったかの様な錯覚に囚われた。
そこに居たのは俺が17歳のあの日、魔女に呪いを掛けられてから、最後に恋をした女性、七海未夏がニッコリと立っていたのだった。
止まっていた、15年の歳月がゆっくりと動き出した様な気がした。
「七海さん・・・・・・・」
「お久しぶりね、結月君。元気してた?」
俺は苦笑を交え答えた。ある意味あの魔女と出会ってから本当の意味で心が晴れると言う日々を過ごした記憶は一度もなかったからだ。
「まあ・・・ね。七海さんは?」
するとだった。七海さんは顔をくしゃりと歪めて答えた。
「実は私・・・・余命半年ってお医者さんに宣告されたんだ・・・」
落雷に襲われたかの様な衝撃が俺の心に走った。
なんで・・・・奇跡的な再開が・・・・この様な形で始まらなければならないのか!
俺は・・ドシンと拳でテーブルを殴った。
七海さんがそんな俺の拳に悲しそうな視線を落として言った。
「癌なのよ・・・。でもね、最後、結月君にまた会えて嬉しかった。ウフフ。私ね、結月君に高2の時告白してフラれたでしょう。そしてあれからたくさん恋をして来たけれど・・・結局結月君よりも好きになった人一度も出会えなかったから。結月君の思い出は私にとって失恋の思い出だけれど、それでも、最後、結月君にまた奇跡的に会えた事がとても嬉しいの」
そう、俺は、高2の時、七海の告白を断った。しかし本当は両想いだった。そう、あの魔女の呪いが原因だった。もし七海と恋をして結婚し・・・七海がもし俺より先に死んでしまったら、俺は嘘泣きでは済まないと思ったからだ。そう、心の底から悲しみ、号泣してしまう。だが・・・そうすると俺は魔女の蛇の呪いにより、死ぬ。そう、俺は天秤に掛けたのだ。俺は自身の死を持ってしても、彼女を愛し抜く事が出来るかと?
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