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俺達の恋はカフェでの奇遇な出会い以来、再び動き始めたのだった。
本当ならば・・・もしかするとあの魔女の介入さえなければ、二人の運命はもっと早く交わり結婚をしていた可能性も否定出来ないはずだった。
七海は通院しながら、そして俺達は最後の恋の花を愛おしみ、慈しむかの様に大切に大切に育てて行った。
それは例えば世界中を旅して名所を巡るとかそんな日々を送るのではなく、ささやかではあるものの、日常の一瞬一瞬の輝きを大切に掬い取るかの様な、そんな風な七海と俺との時間の刻み方だった。
二人でお気に入りのカフェを見つけさりげないトークを楽しむ時間。
二人で寄り添いながら映画を見る時間。
七海の手料理を「ちょっと味薄いぞ」等とつっこみながら楽しく食事する時間。
海岸で小さな貝殻を拾い集めながらデートをする時間。
そして・・・・ベッドで熱く愛を交わす時間。
そんなささやかな時間こそ二人にとって掛替えのない最高の贅沢な時間だったのだ。
しかし、無情にも医師の宣告通り、七海は徐々に憔悴して行き、最後は通院する事さえ叶わず、病院での最後の闘病生活となった。勿論、そうなる前に何件ものセカンドオピニオンにも当たり、様々な治療法も試してみた。だが・・・もう手遅れだったのだ・・・。
ベッドの上で力無く、横たわる七海。
もう、俺にはただ七海の手を握り締めて付き添ってあげる以外の事は出来なかった・・・。
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